準備編

1 実施に関係する規則と関係機関

水産資源の適切な保全管理と持続的な利用を図るため、「漁業法」が定められ、その法律に基づき、都道府県では「漁業調整規則」が、各漁業協同組合では「遊漁規則」が定められ、禁漁区、禁漁期間や魚種別の体長制限などが決められています。
  また、各漁業協同組合には、「第五種共同漁業権」が免許され、漁場管理がされています。
 なお、「埼玉県内水面漁場管理委員会」の設置も規定されており、「委員会指示」としてコクチバスのリリースを禁止しています。

魚の観察をする「生き物調査」は、釣りや網を使うため、「遊漁規則」をはじめ、上記の規則等を守る必要があります 。特に、使用する漁具や漁法によっては「漁業調整規則」に従う必要があります。試験研究等として行う場合は特別採捕許可が出されますが、 事前に調査計画や結果の利用方法などの相談が必要となります。

漁業法は総則から罰則までの全10章で構成されています。 第4章漁業調整第65条には漁業調整規則に関する事項が定められており、 第8章内水面漁業第130条には都道府県内水面漁場管理委員会を置くことが定められています。 また、第129条には遊漁規則に関する事項が定められています。

調査体験の規模や専門性によっては指導者の確保を行う必要があります。 埼玉県には水産関係の各種団体や施設がありそれぞれに得意な分野を持っているので講師派遣や調査体験に必要な用具等を 相談してみるのも良い考えです。

埼玉県の水産関係機関(平成22年1月現在)
得意な分野 名称 電話番号
埼玉県の漁場管理全般 埼玉県農林部生産振興課
(内水面漁場管理委員会・水産担当)
048-830-4151
魚類資源に関する研究 埼玉県農林総合研究センター水産研究所 0480-61-0458
淡水魚の生態及び飼育 さいたま水族館 048-565-1010
釣り文化振興、マナー向上 (財)日本釣振興会埼玉県支部 048-728-0964
釣り体験と水辺生態系 NPO法人バーブレスフック普及協会 04-2962-3648

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2 事業計画

(ア) 事業名称の決定と注意点

事業計画を立てる上で重要なのが、メリハリの効いたテーマです。主催者たる案内人が誰に何を伝えたいのかという部分をはっきりさせて おきましょう。事業の主たる対象者(参加して欲しい人)をある程度絞込み、何を体験してもらいたいのかを具体的に決めておくことが 無理のない運営につながります。例えば釣りを通じた自然体験を一般市民に呼び掛ける場合、子供たちの参加を歓迎するのであれば 「親子釣り体験教室」と銘打ちサブタイトルとして{水辺の生き物観察会}とした方が保護者同伴で効率よく参加者を確保できることでしょう。

(イ) 指導者と用具の確保

参加者の顔を覚えることができる程度の小規模なイベントであれば主催者たる水辺の案内人が運営者と講師を兼ねることも可能だと思います。 しかしイベントの規模や専門性によっては指導者の確保を行う必要があります。幸い埼玉県には水産関係の各種団体や施設がありそれぞれに 得意な分野を持っているので講師の派遣や調査や体験に必要な用具等についても相談してみるのも良い考えです (前項の実施に関係する関係機関参照)。具体的な用具については実践編に別記します。

(ウ) 下見 危険箇所の把握トイレの確認 駐車場の確認等

下見のポイントは3つ。危険個所の把握、参加者数に見合った集合場所の確認、そして必要な道具や機材を運ぶための搬入路の確保。 くずれやすい河原や流れが速く深い場所は実際に行った河川風景適していません。 しかし危険に見えない場合もあるのです。苔で滑りやすい川底や底なし沼のように 足が抜けない泥底などは実際に川に入って下見をしなければ分からないものです。 またマムシスズメバチの巣が付近にないかも 要チェック事項です。 次に参加者全員が集合できる場所があるかどうか確認します。日差しの強い時期の日陰のない場所ならばタープやテントなどで参加者に日陰の場所を提供し飲料水を用意することも念頭に下見しましょう。 最後に必要な採集用具や観察用の水槽などを搬入するための通路を確認し、緊急の場合の避難経路と場所を検討しておく必要があります。

(エ) 関係部署への申請告知(事業要綱)の作成

事業要綱に最低限必要な項目を決定します。最初から完璧な要綱を作成するのではなく、関係部署への申請告知用に初版をつくります。 漁協、自治体役場など関係部署と協議していくなかで要綱の内容を 変更したり、より具体的なものに改訂を重ねた最終版を参加者募集に 使用します。地域住民に理解を得るためにイベントを誰が主催し何を目的するのか分かり易い要綱をつくりましょう。会場付近に人家がある 場合は必ず自治会長や区長などの役職の方に河川一時使用届(下記参照)を配布し理解を求めましょう。また普段使われていない河川敷を独占利用する場合は 地域の河川を管轄する土木事務所に申請をする必要があります。

参考資料:河川一時使用届け例(クリックするとワード文書が開きます)

(オ) 広報媒体の決定(ポスター、チラシの作成)

参加者の募集等の広報は先手必勝です。要綱が決まったらさっそく考えなければならないのが具体的な広報媒体です。自治体の発行する無料の広報紙等の印刷物で] 参加者を募集する場合は開催日から逆算するとおよそ三ヶ月前には掲載を申し込まないと間に合いません。 インターネットを活用しホームページ上で広報する場合。それからイベント告知のチラシまたはポスターの作成にとりかかりましょう。

参考資料:ポスター作例チラシ作例(クリックするとPDFファイルが開きます)

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3 保険と参加料金設定

事業計画がまとまったところで必要な予算額をつかんでおくことはとても重要です。すべての運営をボランィアで行う場合でも考慮すべき 経費が下記の遊漁料と傷害保険料です。また参加者の会費は無料がベストとは限りません。参加者の意識を高め本気で自然体験に取り組んで もらうためにも必要な経費を算出し参加料金(会費)を定め徴収することはむしろ必要なことかもしれません。主催者側に属するスタッフや 講師の自己負担が過大にならないように予算全体のバランスを考えて見ましょう。

ア 遊漁券の購入費用

  

実施に関係する法規および行政機関の項で触れているように、魚釣りをする場合原則的に漁業協同組合が管理している河川では釣りをする人の 人数分を購入する必要があります。事前に管轄する漁業協同組合に相談することをお勧めします。
ちなみに埼玉県西部を流れる荒川支流の入間川を管轄する入間漁業協同組合は児童の水辺体験を奨励し中学生以下の子供を無料としすべての 魚種における遊漁料金を徴収しないことを遊漁規則で定めている全国でも稀有な組合組織です。

イ 傷害保険の加入費用

あまり一般に知られていない保険商品にレクリエーション傷害保険があります。比較的低額で幅広く現場の怪我等をカバーできるので是非 団体加入しましょう。我々の経レクリエーション保険パンフレット、写真験上保険加入をお勧めするのは主催者が傷害保険を準備していることで 色々な方々から信頼と協力を取り付け易くする効果があるからです。
実務面では保険会社を問わず参加者名簿の作成が必要になります。 名簿には参加者の氏名と生年月日が必須ですので忘れずに記録しておきましょう。名簿は後日提出するのではなく可能であれば事前に提出して おくと安心です。

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4 参加者車両の駐車場について 〜重要な参加者車両の誘導

河川でのイベントを開催する際に特に注意しなくてはならないのが駐車場の問題です。土日祝日の河川利用者は意外と多く河川敷に自由に 駐車できるとはかぎりません。もちろん環境面からマイカーよりも公共交通機関を利用するのが好ましいのですが、地域によっては参加者が 利用可能な駐車場所を指定し地図で明示する必要があります。
 また現場で駐車場が分かりにくいと様々なトラブルの原因になりかねません。当日に駐車場への誘導員が必要かどうかも考慮して周到な 準備が求められます。

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5[ ゴミ  ] 来た時よりも美しく 

調査体験の最後に参加者全員で河川敷のゴミ拾いをすることは好ましいことです。自分たちの手で来た時よりも美しい河原にすることは イベントの締めくくりとして最適です。
ただし、参加者全員でせイベント後のゴミ拾い風景・写真っかく ゴミを集めても主催者が後の処理方法をきちんと決めておかなかったためにトラブルになるケースがあります。 現地下見の時点で調査地域に大量のゴミが目立つ場合は、収拾した場合のゴミ処理方法について自治体役場に相談しゴミの分別や回収について 取り決めておきましょう。拾い集めたゴミは自分たちの処理すべきゴミになることをくれぐれも忘れないでください。

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